薬は飲まなければならないものでもありませんし、誰かにお願いされて飲むものでもないと思います。あくまで、自分の意志で決定して飲むものだと思います。病気を治療する薬で副作用のない薬はおそらくないでしょう。
HIVの薬も例外ではなく、それぞれに副作用があります。副作用には下痢しやすい、目まいがするなど、自覚できるものと、血液中の中性脂肪やコレステロールがあがったり、肝臓や腎臓の機能が落ちるなど、自覚しにくいものもあります。ですから、そういったものも専門家の医師や薬剤師の先生から的確な情報を得て、よく相談されて、どの薬を飲むか、開始時期はいつにするかなど、長期的な展望をもって服用されるのがよいかと思います。
HIVの薬で一番やっかいなのは、いい加減な飲み方をすれば、薬が効きにくい「耐性ウイルス」ができてしまうことです。自分が服用をコントロールできなかったために、飲める薬の選択肢をせばめてしまうことは、不安を大きくするだけで賢明でないと思います。体内に除去できないウイルスがあるということは現実なのですから、ただ、いやだから、面倒くさいからと、現実から逃避するのもよくないと思います。「飲まない」という選択をするなら、それも、リスクを承知した上で自分で意志決定をすべきだと思います。
HIVが不治の病である以上、薬は私たちの命です。人生は限りある時間で、その限りある時間が命なら、その時間を生み出してくれる薬は「命」だと思うのです。そして、その薬を飲めることは当たり前ではないと思います。現実に、この地球上で、のどから手がでるほどほしい薬が手に入らなくて多くの感染者が亡くなっていっています。この日本でも、十数年前までは、同じ思いをして多くの方が亡くなりました。だから、「薬を飲める陽性者」というのは、選ばれた存在であるといって過言ではないと思います。
現在、日本に住む私たちが保険制度に守られて薬がいただけるのも、その制度が天から降ってきたわけでなく、そのために闘ってくださった多くの方がいて、その中にはもう亡くなられた方も大勢おられます。私たちが今日手にする「薬」は多くの人の思いと命の結晶だと感じます。
私にとって、1日に1回薬を飲む時間は、今日を生きられたことが当たり前でないことを思い出し、込められた命への感謝を思い返す時間です。だから、薬をいただく時には、せいいっぱいの感謝をこめて、そして、生きていく時間をいただいて、土台になってくださった方の分まで幸せな人生をつくりたいと思っています。 |